軽貨物業界では、案件単価や配達件数ばかりに注目しがちですが、実際にはそれだけでは立ち行かないのが現実です。特に法人として事業を運営する以上“お金の管理”は経営の根幹です。

この連載では、軽貨物法人の経営者が最低限おさえておくべきお金の知識、収支の考え方、節税、資金調達などを体系的に解説していきます。

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• 第1回：配送単価だけでは語れない「粗利と実益」
• 第2回：軽貨物業者に必要な「インボイス制度と消費税」の基本
• 第3回：開業資金、最低いくら必要？現実ライン
• 第4回：法人カード・ビジネスカードの選び方
• 第5回：経費で落とせる？落とせない？グレーゾーン事例
• 第6回：税理士と顧問契約すべきか？自計化の境界線
• 第7回：融資とリースとキャッシュフローの正しい考え方
• 第8回：資金繰りとキャッシュフローの基本

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第9回：利益率と金利と税金の関係

軽貨物業を法人として継続・拡大していくには、「売上」よりも「利益」、そして最終的に「現金が残るか」が最重要です。

今回は、ドライバーを20人採用して運営している軽貨物法人を例に、「利益率」「金利」「税金」がどのように資金繰りに影響するのかを具体的にシミュレーションしていきます。

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【前提条件】創業2年でドライバー20人を抱える法人

• ドライバー売上：1人あたり月50万円
• ドライバー報酬比率：85％（1人あたり42.5万円）
• 粗利益率：15％（1人あたり7.5万円）
• 借入額：1000万円（返済期間5年、年利2.5％）
• 法人3期目（消費税納税義務あり）

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月次の収支構造を確認しよう

• 月商：50万円 × 20人 ＝ 1,000万円
• 外注費（ドライバー報酬）：42.5万円 × 20人 ＝ 850万円
• 粗利益：150万円（粗利率15％）

ここから事務員給与・管理費・システム料などに50万円かかると仮定すると、

• 営業利益：150万円 − 50万円 ＝ 100万円

利益はしっかり出ていますが、ここからさらに“見落とされがちな支出”が出てきます。

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融資返済の影響

1000万円の借入を年利2.5％、5年返済で考えると、

• 年間利息：約25万円（月あたり約2万円）
• 月額返済（元本＋利息）：約18万円

つまり営業利益100万円から毎月18万円が差し引かれる構造になります。

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消費税の納税シミュレーション

法人3期目からは消費税の納税義務が発生します。

• 月商：税込1,000万円 × 12ヶ月 ＝ 年間1億2,000万円
• 税抜売上：1億2,000万円 ÷ 1.1 ≒ 1億909万円
• 売上にかかる消費税：1,091万円

外注費も課税仕入として控除対象：

• 外注費：850万円 × 12ヶ月 ＝ 年間1億200万円
• 税抜外注費：1億200万円 ÷ 1.1 ≒ 約9,272万円
• 消費税相当額：928万円（控除可能）

納税額＝売上消費税1,091万円 − 控除928万円 ≒ 163万円（年間）
→ 月あたり約13.6万円の負担

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法人税の納税シミュレーション

営業利益が月100万円あれば、

• 年間利益：1,200万円
• 実効税率30％と仮定 → 法人税：360万円（年）
  → 月換算：約30万円

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結局、月にいくら残る？

• 営業利益：100万円
• 融資返済：−18万円
• 消費税：−13.6万円
• 法人税：−30万円
  → 手元に残る現金：約38.4万円／月

見た目の利益100万円のうち、実際に残るのは約4割。キャッシュフロー上の余裕は意外と少ないのが現実です。

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借入なしでギリギリ回していた場合の落とし穴

一方で「借金ゼロでやってきたから大丈夫」と安心していたケースでは、さらに注意が必要です。

創業2年間の免税期間中は納税不要だったものの、3期目に突如163万円の消費税納税義務が発生。

もし手元資金をギリギリで回していた場合、

• 一括納税が難しい
• 延滞によるペナルティ発生
• 信用情報の悪化
  といったリスクに直結します。

借入を避けることが必ずしも安全とは限らず、むしろ“備えとしての融資”の視点が重要です。

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適正な利益率の設定がカギ

このように、

• 外注費率（報酬比率）をどう設定するか
• 管理コストをどう抑えるか
• 税金・融資を織り込んだ利益設計ができているか

これらすべてが、「適切な利益率」の設計につながります。

見かけの利益ではなく、「手元に現金が残る仕組み」を作ることが、強い経営に直結します。

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次回は「利益が出た年の落とし穴（決算賞与・繰越欠損・消費税）」について解説します。

それでは本日も安全運転で！ごきげんよう。