スズキ エブリイPC 64V
2026.06.12
中古車
さて。
ユーザー買取のヴェルファイアが、本日、入庫した。
これは事実だ。動かしがたい事実だ。
しかし同時に、もうひとつの事実も告白しておかなければならない。
俺は、ミニバンというジャンルに対して、限りなく無関心に近い距離感で生きてきた人間である。
プライベートではセダン一筋。仕事は軽バン、ハイエース、トラック。トヨタ車に関して言えば、ハイエース以外はほとんど運転経験がない。周囲を見渡しても、ミニバン派は少数派で、どちらかといえばSUV派が幅を利かせている、というのが俺の知る世界だった。
つまり、ヴェルファイアがなぜここまで売れているのか、その理由を、俺は「データ」としては知っていても、「実感」としては理解していなかった。
結論を先に言ってしまおう。
乗ってみて、納得した。
売れる理由が、確かに、ある。
買取後の作業は、まず室内清掃から始まる。
シートを外すような大掛かりなものではないが、隅々まで汚れを落としていく。そのあと、磨き作業に入る。
中古車というのは不思議なもので、汚れている状態だと欠点しか見えてこない。逆に、綺麗になると、その車が本来持っている価値が、急に顔を出す。
これは、人間関係にも似ている気がする。
少し、ブラックな話だが。
そんな作業を終えて、改めてハンドルを握った。最初に感じたのは、運転のしやすさだった。
車体は大きい。見た目にも、しっかりとした存在感がある。
ところが、走り出してみると、その「大きさ」を意識する場面が、思いのほか少ない。
街中の右左折は自然。狭い道でも、過度な緊張は要らない。
サイズを感じさせない車、というのが、一番近い表現かもしれない。
もちろん、軽自動車のような感覚とは違う。それでも、見た目から想像する以上に、ずっと扱いやすい車だった。
大きな車で、誰もが気にするのは駐車だ。
ここで効いてくるのが、バックカメラである。
最近では珍しい装備ではない。ただ、車体サイズが大きい車ほど、その恩恵は大きくなる。後方確認がしやすく、車庫入れもスムーズだ。慣れてしまえば、セダンとさほど変わらない感覚で扱える。
乗る前は、「このサイズは、気を使うだろうな」と思っていた。
完全に、先入観だった。
数字で見る大きさと、実際に運転する大きさは、違う。
これは、軽貨物の世界でも同じことが言える。軽バンしか乗ったことのない人間が、ハイエースを怖がるようなものだ。
数日もすれば、普通になる。
人間の適応力というのは、だいたい雑にできている。


そして、一番驚いたのが、2列目だ。
正直に言う。ここが、衝撃だった。
運転席ではない。後席の話だ。
普通の車の後席は、移動するための空間だ。
ヴェルファイアの2列目は、少し違う。
滞在するための空間、なのである。
シートは大きい。可動域も広い。足元にも余裕がある。
少し後ろに下げると、前席との距離が、異様に広くなる。
「あれ、まだ下がるの?」
思わず、確認したくなるレベルだ。
天井も高い。圧迫感がない。
座っている、というより、くつろいでいる、という感覚に近い。
移動時間を「我慢する時間」ではなく、「過ごす時間」に変えてしまう。
人気の理由は、エンブレムでも、排気量でもない。
この空間そのものだ。
中古車の仕事をしていると、スペック表を見る機会は、自然と増える。
年式。走行距離。装備。修復歴。
もちろん、どれも大切な情報だ。
ただ、本当に売れる車には、数字だけでは説明できない部分が、確かに存在する。
ヴェルファイアは、まさにそれだった。
家族で出かける人。送迎で使う人。長距離移動が多い人。
そういう人たちが求めているのは、馬力ではない。
快適さだ。
そして、快適さというものは、写真だけでは伝わらない。
実際に座って、初めて理解できる類のものだ。
今回の車両も、清掃しながら、何度も室内を見ていた。
そして、乗ってみて、思った。
なるほど。
これは、売れる。
むしろ、売れない理由を探す方が、難しいかもしれない。
セダンしか乗ってこなかった人間からすると、ミニバンというのは、少し別の世界だった。
仕事車とも違う。SUVとも違う。
ところが、実際に触れてみると、想像していたよりずっと、合理的だった。
広い。快適。運転しやすい。そして、リセールも強い。
人気が出る条件が、綺麗に、揃っている。
世界中で売れる理由というのは、案外、こういう当たり前の積み重ねなのかもしれない。
今回のユーザー買取車両で、その一端を、少しだけ理解できた気がする。
なるほど。
これは、世界のトヨタだ。
ちょっと悔しいが、認めざるを得ない。
明日の空が、限りなく透明に近い青色でありますように。

中島 一
運送会社の役員として10年以上にわたり物流業界に携わり、3PL事業も展開。物流の上流工程からラストワンマイルまで一貫して対応できる幅広い知見を持つ。
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