スズキ エブリイPC 64V
2025.11.05
お金経営
運送業、とくに軽貨物業界では「末締め・翌々月末払い(約60日サイト)」が標準です。
これは「1月に稼働した分を3月末に支払う」形ですね。
この仕組みは、
つまり会社が意図的に支払いを遅らせているわけではなく、
入金が遅いから出金も遅くなる──それだけの話です。
それでも近年、「翌月払い」「週払い」「即日払い」を打ち出す会社も増えています。
この“支払いが早い会社”には、たしかにメリットもありますが、同時に大きなリスクも潜んでいます。
個人事業主のドライバーにとって、毎月の現金回収は命綱。
60日待たずに翌月や週ごとに入金されると、生活資金・ガソリン代・整備費などをスムーズに回せます。
ドライバーにとって「報酬を早くもらえる=安心感」。
特に開業直後や繁忙期前の資金繰りには大きな助けになります。
募集広告で「週払いOK」「翌月払い」「即振込可」と書くと、
応募率は確実に上がります。
実際に、ドライバー側は“支払いサイト”を見て会社を選ぶ傾向が強い。
つまり早い支払いは採用面での強力なアピール材料になります。
報酬を早く支払う会社は、「誠実」「信頼できる」と見られやすい。
支払いを待たせないことで、現場の不満が少なくなり、トラブルも減ります。
支払いが早い会社ほど、ドライバーからの信頼を得やすいのは確かです。
最大の問題はこれです。
荷主からの入金は約60日後なのに、ドライバーへは30日以内に払う──
つまり、入金より先に数百万円〜数千万円を立て替えることになります。
1社2社なら問題なくても、契約ドライバーが数十名いれば一気に数千万単位の資金繰りが必要。
この立て替え資金を確保できる会社はごく一部です。
もし荷主の支払いが遅れたり、回収不能が発生した場合、
一瞬でキャッシュが詰まります。
支払いが早い会社ほど、「現金が尽きたら即倒産」の危険性が高いのです。
早期払いを行うには、立て替え資金を準備する必要があります。
多くの場合、
これらには手数料・利息が発生します。
そのコストは最終的に「取引単価」や「手数料率」に跳ね返ります。
つまり、支払いが早い=どこかでコストが上乗せされているという構造です。
一度「早く払う仕組み」を導入すると、途中で戻すのはほぼ不可能です。
翌月払いに慣れたドライバーに対して「来月から翌々月払いに戻します」は通用しません。
経営が苦しくなっても、支払いを遅らせる=信用失墜。
つまり、一度早期払いを約束した会社は“自分で首を締める構造”になるのです。
資金繰りが詰まって倒産した会社の多くが、
実は「支払いが早い会社」だった──これは業界ではよく知られた話です。
早期払いは、請求内容の検収・確認を簡略化して行われることが多いです。
「とりあえず今週分を先に払う」
「請求確定前だけど仮で入れる」
──このような運用は、ミスや不正を招きやすい。
後日、荷主側で数量差異・返品・キャンセルが発生すると、
ドライバーへの支払いと帳尻が合わず、トラブルに発展します。
スピード重視は信頼につながる半面、精度の低下という副作用も避けられません。
早期払いをできる会社には、いくつかのパターンがあります。
この中で健全に早期払いを維持できるのは1つ目だけです。
多くの会社は、採用・競争目的でリスクを背負っている状態。
短期的には魅力的でも、長期的に見ると危険な運営になりがちです。
支払いサイトを整理すると、次のように考えられます。
| 支払いサイト | 会社の特徴 | ドライバー視点 | 経営リスク |
|---|---|---|---|
| 翌々月末(60日) | 業界標準・安定型 | 待ちが長いが確実 | 小 |
| 翌月末(30日) | 攻め型・採用重視 | 資金繰りが楽 | 中 |
| 週払い・即日払い | 超短期・立替運営 | すぐ入るが不安定 | 高 |
支払いが早いほどドライバーには優しいように見えますが、
経営リスクが比例して大きくなるのが実情です。
したがって、「支払いが早い=良い会社」とは限らず、
“確実に払える会社”こそ信頼できる会社と言えます。
ドライバーとしても、
「なぜ60日なのか」「早くするにはどんなリスクがあるのか」を理解しておくと、
会社選びを間違えません。
“早い支払い”より“続く支払い”の方が大切。
倒れない会社と組むことが、結局は自分を守ることにつながります。
燃料高騰・物価上昇・人手不足──業界全体がコスト増の中で、
現金をすぐに回す仕組みは経営的にリスクが高い。
支払いサイトを60日にしている会社は、
“余裕がない”のではなく、“潰れない設計”をしている会社です。
「支払いが早い会社=良心的」ではなく、
「支払いが遅くても確実な会社=信頼できる」。
ここを見誤らないことが、ドライバーにとっても経営者にとっても最も重要です。
それでは本日も安全運転で!ごきげんよう。

鈴木 徳俊 軽バン工房の機械係
45歳。軽貨物業界の現場を知る一人として、リアルな経験をもとにブログを執筆。日々の業務や業界の動向、事業者やドライバーにとって役立つ情報を発信している。
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